さて、本記事は小説形式でお届けしております。
まだ前回の話を読んでいない人は、ぜひこちらから読んでみてください。
前回は、たくまともえのデートの様子を描いてきました。その中で、デート中の女性の行動心理に関しても触れてきました。
女性経験のない男性ほど、その場が楽しくなくても空気を壊したくないと思う女性心理をわからないものです。だから、気を遣う女性の姿を見て、
「この子は俺とのデートを楽しんでくれているんだ」と勘違いしがちです。
すぐにこの辺を見抜く目を養うのは難しいかもしれませんが、デートの機会に恵まれた際には、ぜひこのことを意識してデートに臨んでいただければと思います。
意識をするかしないかで、あなたが女性の行動心理を読めるようになるまでにかかる時間が大幅に変わってきますので。
さて、今回は、たくまの1週間後にデートを控えていたけいたの話です。
たくまとは違い、細かく策を練るタイプのけいたですが、その行動が吉と出るか凶と出るか。
それでは、参りましょう!
デートは事前の段取りがすべて?
「なあ琥珀、今度のもえちゃんとのデート、どんな店がいいと思う?」
いよいよ来週に迫ったもえちゃんとのデートで、どこのお店にしようか俺は悩んでいた。自分の中でも軸は持ちながら店選びをしているつもりではあるが、いかんせんデート経験がないことは否めないので、琥珀に相談していた。
「けいた的に、なんか候補とかあるの?」
「一応、〇〇ってお店がどうかなとは考えてる」俺が案で示したのは、デパートの中にある海鮮系の料理屋だ。
無理しすぎていなくて、適度におしゃれで、それなりの価格帯。
俺がこの店をチョイスしようとした軸はそんなところだ。
「あー、あそこ俺行ったことあるけどいいんじゃない?初デートにはちょうどいいバランスな気がするな」琥珀はうなずきながらそう言った。
「だよね!俺もバランスがいいかなと思って選んだんだ!」琥珀と意見があったので少しうれしくなった。しかも、琥珀が一度行ったことがあるというのは心強い。
「そうだね、初デートでいきなり格式が高すぎるお店だと向こうに引かれちゃう恐れがあるし、かといって適当なファミレスとかはセンスがないし、ちょうどいいと思うよ!」
そんな感じのやり取りがあって、ひとまず店は決定した。デート当日までに念のため俺も、お店にご飯は食べにいこうと思っている。
「あとは、当日の会話の内容とかどんな感じがいいのかなって?」俺は追加で琥珀に聞いていた。一応琥珀にこれを聞くにあたって、自分の中で会話のネタ帳みたいなものは用意してある。
「会話の内容まであらかじめ決めておくのはさすがに無理があると思うけどねー。」琥珀はそう答えた。
「そうだね。でもさ、こないだの合コンで得たもえちゃんの情報はきちんと押さえてあるし、例えばそこでもえちゃんが言ってた、漫画が好きって話あったじゃん?だから漫画系のネタを自分の中で用意しておいたりとかさ。そういう下準備はできるかなって」
けいたの用意周到さには目を見張るものがあった。
ちょっと考えすぎなんじゃと思う部分もあったが、事前にあれこれとシミュレーションしておくことは悪くないことだと俺も思う。
たしかに、こないだの合コンでもえちゃんから得た趣味の情報がせっかくあるので、それに対するリサーチをあらかじめしておくというのは重要になると思った。
俺は会話が得意な分、いつもそういう準備をせず適当に自分の話をしまくることが多いけど、きっと、相手の趣味の話に合わせて話ができるほうが、相手も気持ちよく話せるし、会話が盛り上がるんだろうなーと思った。
その後もけいたは俺に、考えているあらゆる計画を話しながら、相談をしてくれた。
中には、もしたくま先輩がうまくいっていた場合に、こうやってたくま先輩を陥れようと思っているという、恐ろしい計画まであった。
いづれにしても、俺はここまで計画を練ってデートに臨んだことがなかったので、けいたの姿勢は勉強になるなと思った。
果たしてデートを1つの戦いととらえているような、けいたのこの策士のような用意周到さが、吉と出るのか凶と出るのか。1週間後のデートの結果が俺も楽しみだった。
初デートはシンプルにスマートに
当日である今日を迎えるまでのけいた君の動きは非常にスマートだった。
まず1週間ほど前に、「ここのお店なんかどうかな?」とお伺いがきた。
私もよく買い物に行くデパートの上層階のレストラン街にあるお店で、好印象だった。
その海鮮のお店にはいったことはなかったけど、デパート自体は知っていたので、ラフな気持ちで行けるなと思った。お店選びはまず好印象だった。
そしてその後もLINEの頻度は1日1往復ほど。ややそっけなくも感じたが、初デート前だし、あんまりLINEで会話しすぎるのもしんどい。
よほど面白いLINEならともかく、基本的にはネタが尽きて惰性になる。
そうなると、会う前からデートに嫌気がさしてきて、「ドタキャンしようかな」なんて思ったりすることもある。
それを思うと、少しそっけないくらいがデートへのほんのりした期待も抱けていいと思う。
そして今日がデート当日。たくまさんとのデートが散々だったので、正直今日も最初は面倒くさいなと思っていたけど、ここまでのけいた君のスマートな流れに少し期待を抱いている自分もいた。
待ち合わせ場所に着くと、そこにはけいた君が待っていた。
黒のドレスシューズに、黒のスキニー。白のシャツに、グレーのジャケット。
少しフォーマルが強い印象も受けたが、服装は好印象だった。
たくまさんの時がいかんせんひどかったので、今日もちょっと心配してきたのだが、けいた君は服装という第一関門も突破してきた。
ちなみに髪型もセットされた短髪で、好印象だった。
欲を言えば、私の好みはマッシュだけど(笑)
「あ、もえさん。お久しぶりです、けいたです」けいた君はかしこまってそう挨拶してきた。どうやら少し緊張しているらしく、その緊張感がこちらにも伝わってきた。
向こうが緊張していると、こっちまで少し緊張してしまう。なんだか初デートしてるなーって思った。
どこかよそよそしい態度の私たちは、そのまま軽く会話を済ませながらお店に向かった。
ロボットデートはお嫌いですか?
店に着き、今俺はお手洗いの鏡の前に立っていた。
「ふう。思ったように会話がうまくいかないな。」俺は鏡に映る、面食らった自分の顔を見つめながら、1人そうつぶやいた。
いろいろと家でシミュレーションをしてきたが、全然会話がその通りにならない。
加えて、シミュレーションをしすぎたせいで、会話がシミュレーション通りにいかないと途端に応用がきかなくなり、もえちゃんとの会話がぎこちなくなってしまっていた。
琥珀が「あんまり細かいシミュレーションをしても、会話は相手がありきなものだから、意味がないような気がするけどなー」と言っていた意味がようやくわかった。
意味がないどころか、これでは完全に逆効果になってしまっている。
いったん、シミュレーションのことは頭から忘れて、素の自分の会話で勝負した方がうまくいくような気がした。
「よし!」俺は顔を少し水で濡らして、気合を入れなおした。
ロボットのような会話はもう終わりだ。ここからは自分らしい会話で、もえちゃんと仲良くなってみせる。
そう気合を入れなおして、俺はお手洗いを後にした。
「ふう。なんだかたくまさんのときよりも緊張しているなー」お手洗いの鏡の前で化粧を直しながら、私は一人そうつぶやいた。
理由は2つある気がしていた。
1つは、けいた君が思いのほか緊張していて、会話がなんだかぎごちなかったことだ。
あらかじめ話す内容でも決めていたかのような感じで、時折言葉を発するのにつまっていた。なんだか、軽くロボットと会話をしているような気分だった。
だから、そのぎこちないけいた君に影響されて、私も緊張しているんだろうなというのが1つ目の理由だ。
2つ目の理由は、おそらく私がけいた君を異性として意識しているからだ。
たくまさんの時は、最初からこの人はないなと思っていたので、ほとんど緊張せずに話せたが、今回はけいた君を異性として少しありだと思っているからか、たくまさんとのときほどスムーズに話題が出てこないことがあった。
とはいえ、けいた君がこのままロボットのような会話を続けてきたら、私の気持ちもきっと冷めてしまうだろう。
不安をいろいろと抱えながら、私はけいた君の待つお店に戻っていった。
素で会話を楽しむことの重要性
俺はお手洗いから戻ってきたら、完全に頭を切り替えていた。
事前にシミュレーションしてきた内容はすべて頭から忘れて、もえちゃんの趣味などの必要な情報だけを頭に残して、再度もえちゃんと向かい合った。
「いやー、なんかここまで来る間すごい緊張しててごめんね」俺はもえちゃんにそう謝った。
「ううん、ぜんぜん。私も緊張してたし。やっぱり初めての2人でのデートは緊張するよね」もえちゃんは言いながら、少し照れたような表情を浮かべていた。可愛いなと思った。
「そうだね。こないだ合コンで初めて会って、いきなり2人きりのデートだもんね。緊張するよね(笑)」
「そうだよね(笑)そりゃ緊張するよね(笑)」もえちゃんは、2人きりのデートというワードに反応したようで、ますます照れたような表情を浮かべていた。
自分だけでなく、もえちゃんも緊張していたことがわかって、なんだか緊張が少し解けてきた。
さっきまでは、こう言ったら次はどう話すんだっけ?と事前にしてきたシミュレーションのことばかりを考えていたから、会話が全然楽しくなかったし、肝心のもえちゃんの反応がまったく見れていなかったけど
いつもの自分のように自然に話すようになってからは、もえちゃんの反応を確認できる余裕も出てきたし、何より会話が楽しくなってきた。
そこからは、事前に整理しておいたもえちゃんの趣味の話を中心に会話を展開していった。
爆笑が生まれるときもあれば、少し沈黙が生まれるときもあったけど、なんだかそういうやり取りの1つ1つが、デートしているんだなっていう新鮮な心地よさを生んでくれている気がした。
すごく感覚的な話だけど、きっと今回の初デートはうまくいったんじゃないかっていう気がした。
だから俺は最後に、勇気をもってもえちゃんを誘ってみた。
「あのさ、今度うちの大学の学園祭があるんだ!うちのサークルも出し物やってるし、かなやしょうまもいるから、よかったら今度こない?」
これは俺がシミュレーションしていた最後の誘い文句だ。ここはシミュレーションにのっかることにした。
「うん!いきたい!ありがとう。楽しみしてるね!」そう言ってもえちゃんはにっこり笑った。
俺が渾身のちからで準備した初デートはこうして成功で幕を閉じた。
さて、いかがだったでしょうか。六章はここで終わりです。
けいたのデートはたくまとは違ってうまくいきました。
そして、そんなけいたの特徴は、デート前に怖いほどのシミュレーションをしていったということでしたね。
結論からいうと、必要以上にシミュレーションをしていく必要はありません。
本文中のけいたも途中で気づいていましたが、あまり細かくシミュレーションをしたところで当然その通りにはいきません。
だから、相手の趣味が○○だったからこの話をしようかなとか。シミュレーションはその程度にと止めておくと、大きな効果を発揮します。
いよいよ次の七章ではこれまで登場していなかった新キャラが登場します。
彼の登場が、もえちゃんをめぐる男子の恋模様に大きな嵐を巻き起こすことになります。
そして、ここまでまったく動きを見せていないしょうまはこのまま動かず終わるのか?
物語はいよいよ終盤戦に入っていきます。次回以降もぜひ、楽しみにしておいてください!
それでは。
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